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青池憲司コラム眼の記憶09

第11回 KOBE〜中越、そして(1)
2009.6.11

 5月から6月の初めにかけて、数日間ずつ、阪神大震災の被災地KOBEと新潟県中越地震(2004/10/23)の被災地へ行ってきました。中越地震被災地を訪ねるのは今回がはじめて、向かったのは長岡市の栗山沢地区と山古志地区、小千谷市の塩谷地区です。訪問の目的は、阪神大震災の復興過程で生まれた「人と地域」再生のための活動、そこで培われた「人と地域」再生のための知恵や技術が、新潟県中越地震の被災地へ、どのようにリレーされていったかをたどってみたい、というものです。さらに、阪神と中越の間に台湾921地震(1999/09/21)を、そして、中越のあとにスマトラ島沖地震(2004/12/26)を置いて、「知恵と技術」(復興知)の「伝え繋ぎ」(リレー)のプロセスを追跡してみたい、と考えています。

 阪神大震災の復興過程では、住民、専門家、ボランティア、行政、この四者がそれぞれの持てる力を出し合い、その力を融合してモノゴトを進めてきました。地域環境によって進捗状態はさまざまですが、被災地KOBEの再生の道のりは来年、震災15周年をむかえます。ちなみに、ことしは、台湾10周年、中越とスマトラ島沖地震5周年です。わたしの今回の被災地尋ね歩きの旅は、いまも阪神大震災を語りつづけるKOBEの関係者からはじめました。

「世界災害語り継ぎサミット」なるタイトルのイベントが2010年1月の神戸で予定されています。その意図や内容について、まずは、霞が関の総務省消防庁、国民保護・防災部参事官の深澤良信さんに尋ねました。深澤さんは、以前、神戸にある<人と防災未来センター>の副センター長をしていた人です。「世界災害語り継ぎサミット」を主催運営するのは有志で構成する実行委員会で、共催や後援に、民間団体、関係省庁、国際機関などを依頼中とのことです。実行委員会は現在はまだ(準)の状態で、深澤さんはそのスタッフです。以下、氏へのインタヴューと資料からの抜き書きです。

「災害では、人はかけがえのないものを一瞬にして失ってしまうなど、不条理な事態におかれます。その一方で、命の尊さや共に生きることの大切さ、自然の脅威など、平常時には思うこともすくない重要な教訓や知恵に気づきます。世界各地の被災地では、多くの人びとが、そのような自らの被災体験を語り継いでいます」

 「実際に起きた事柄にもとづいて当事者が発するメッセージは、人びとに深い感銘をあたえ、人間の考え方や生き方にも影響があります。また、人びとの防災意識を高め、被災地のよりよい復興や地域づくりを進めていく原動力にもなります。時間や場所や世代を越えて災害体験を語り継ぎ、共有していくことは、当事者のみならず、社会全体にとっても極めて重要です」

 深澤さんの話はつづきます。

 「しかし、語り継ぎなどほとんどなされていないか、偶発的散発的にしか行われていない被災地もたくさんあります。語りたくない人たちが大勢いることも忘れてはならないでしょう」

 「そのようなことも踏まえつつ、各地での語り継ぎをいっそう促進するために、2010年1月に神戸で『世界災害語り継ぎサミット』を開きたい、と計画しています」

 「世界各地で語り継ぎに取り組んでいる関係者が一堂に会して、交流と連携を深めます。これまでの各地の取り組みを振り返り、災害体験の語り継ぎとは何か、人びとはなぜ語り継ぐのか、語り継ぎの真のメセージは何なのか、語り継ぎにはどんな意義があるのか、などを見つめ直し、語り継ぎのさらなる発展を促したい、と考えています」

 「ここでいう『語り継ぎ』は、ことばで語る『語り継ぎ』だけでなく、写真や映像、手記、壊れた時計などの事物、記念碑や公園などで間接的に語り継がれるものをふくんでいます」

 上述のような理念と目的をもって行われる「世界災害語り継ぎサミット」は、世界25以上の国と地域の、自然災害の語り継ぎに活発に取り組んでいる関係者や団体、語り部、研究者、行政機関などへ参加を呼びかけるそうです。阪神大震災15周年にふさわしい行事だと、わたしは考えます。災害の困難を乗り越えて、よりよいコミュニティづくりへ向かう住民たちの大集会になるといいですね。

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