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コラム「Circuit 06」青池憲司

第22回 東京の盆休み
2006.8.18
まち歩きの途次、新宿区東戸山で奇妙な塔状の建物に出会った。 近所の人に訊いたら、戦後すぐにつくられた団地の給水塔だという。 団地は再開発でニュータウンになり、この給水塔は使われていない。
▲まち歩きの途次、新宿区東戸山で奇妙な塔状の建物に出会った。
 近所の人に訊いたら、戦後すぐにつくられた団地の給水塔だという。
 団地は再開発でニュータウンになり、この給水塔は使われていない。

 世間が旧盆の数日間は、東京の1年でもっともわたしがすきな“季節”である。車がすくなく空の気配はさわやか、人もすくなくまちの佇まいがこまやか。ストリートはふだんのように厚化粧ではなく、Shyな別嬪さんの貌になる。毎年この時期に出現する「架空のまち」とでも名付けたくなる街区路地界隈――東京を歩くにはこの時期がよい。

 14日。東京は大停電に見舞われて朝から大混乱に陥ったが、わたしの住区は10分程度の停電でさしたる被害なし。地下鉄東西線もすぐに復旧した。電車の車窓から見事な入道雲を見る。地下鉄だがこの辺は地上高架だ。電車は都県境の旧江戸川を渡る。この川の下流、河口近くに停電の原因となった送電線損傷の事故現場がある。日本橋で乗り換えて三田へ。品川区田町札の辻近くの企業へOさんを訪ねる。あるドキュメンタリー映像の企画の下調べが目的である。Oさんは会社社長という要職にある人だが、南京玉すだれの名人で、練達の余技を、仕事の合間の趣味の域を超えて、ボランティアと地域活動にいかしている。同好の士との老人ホームなどへの慰問は平均月2回以上を数え、伝統文化学習の一環として小学校での実演依頼もあるという。

 Oさんが仲間とつくる「南京玉すだれ同好会」のボランティア活動でわたしが関心をもったのは、新宿区北新宿にある「東京日本語教育センター」(旧国際学友会)の学生たちとの、南京玉すだれをとおしての交流である。東京日本語教育センターは、アジアを中心とする世界30数か国から毎年300人〜450人の留学生を受け入れている。その留学生たちにOさんが出会ったのは、1996年に国際学友会時代の同センター(2004年から現組織)が開いた「南京玉すだれ講座」の講師として招かれたときである。講座に参加する留学生たちは6月から3回の講習を受け、9月中旬に“卒業公演”となる。その晴舞台は新宿西口の熊野神社例大祭の特設ステージである。その年は、Oさんの手ほどきを受けたインドネシア、シンガポール、タイ、マレーシアからの留学生12名が、Oさんの司会進行のもと、師匠も驚くほどの舞台度胸でレインボー・ブリッジや東京タワーなどの技を演じて、観客の喝采を浴びたという。以来10年、いまもこの講座はつづいていて、ことしの参加者は15名。やはり、熊野神社例大祭の特設ステージで“卒業公演”がある。9月15日午後6時30分から、特設ステージは新宿西口の新宿郵便局近くである。

 日本の大衆が愛好してきた大道芸にアジアの若者たちが触れることで、日本文化体験の一つになればとの主催者の趣旨を住民が具体化し、その活動を地域とアジア交流の一環として持続発展させている。先述した「あるドキュメンタリー映像の企画」は、こうした市井の人びとと外国人の「普段着のつきあい」を採集しようとする試みである。


*関連リンク

  • 西新宿1丁目最新イベント情報:2006年熊野神社例大祭
    http://www.nishishinjuku.info/event/2006/event_maturi.php
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