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青池憲司コラムさまざまな震後2013

第1回「現代学校運動JAPANの学習会で」
20130719

 6月22日、わたしも会員である現代学校運動JAPAN(*)の学習会で、「映画『津波のあとの時間割』をめぐる起承転々」と題して、出席者みんなでお喋りをしました。タイトルどおり、あの話このエピソードのいったりきたりで、さぞや"まとめ係"の山口洋一さんは四苦八苦されたことであろうと推察します。そのことにセキニンを感じてというわけではないのですが、お喋りの最初のボールを投げた側もなにか感想めいたモノを書いてみようと思い立ちました。

 映画「宮城からの報告〜こども・学校・地域〜」製作委員会の製作で、3本のドキュメンタリー映画がうまれました。映画の撮影期間は2011年6月から2012年4月までの11か月。撮影地は石巻市内(門脇町、南浜町ほか)と石巻圏の諸地域。

 3作品は、『3月11日を生きて〜石巻・門脇小・人びと・ことば〜』(2012年2月公開)と『津波のあとの時間割〜石巻・門脇小・1年の記録〜』(2012年8月公開)のほかに、短篇『わたしはここにいます〜石巻・門脇小・夏〜』です。短篇は、撮影途上の特別報告として、上記2作に先行して公開されました(2011年10月)。

 長篇2作の上映開始以来、『3月11日を生きて』は約1年半、『津波のあとの時間割』は約1年の月日が経とうとしています。その間、わたしは多くの会場へ足を運びました。

 劇場、市民ホール、コミュニティ・センター、学校など、大きなイベント、小さな催し、団体、グループ、さまざまな上映現場へでかけていって、観客の入りと反応に注目しました。映画を完成したあとの映画作者の念頭にあるのはこの2点です。「人それぞれがこの映画を"どのように"受けとめてくれるか」ということがまず気になります。あたりまえのことです。でも、評価のヨシアシは観た人がきめることで、どのようにヨシなのか、いかにアシなのか、がわたしの関心事です。"どのように"をめぐっての議論が作品の有効性をふかめていく導糸だ、と考えています。

 会場での観客との応答、アンケート、メディア紙誌、フェイスブック、ツイッター、などなどで映画の評価を知ることはできます。2作品の客層は小学生から高齢者までと各年代にわたっていて多層です。仕事も職業も多岐です。そんななかで、わたしがずっと気にしていた職域があります。教育関係の人たちがこれらの映画をどのように観たかということです。とくに、『津波のあとの時間割』は、小学校生活と授業を軸に作品を構成しているので、学校現場の教師たちの反応がとても気になりました。被災地(たとえば石巻や仙台)の上映会に参加してくれた教師と、非被災地(たとえば東京)で観てくれた教師の、映画の評価にちがいはあるのか、などと想像したものです。これはいささか、性急な発想でもあるのですが、しかし、そのあたりの事柄をゆっくり考えてみたい、とつねづね思っていました。

 そんなときに現代学校運動JAPANの学習会の機会がめぐってきました。と書くと、満を持して6月22日にのぞんだように受け取られるかもしれませんが、そうではありません。逆に手探り状態でありまして、そこで、わたし自身の3月11日体験などをマクラにして、4月10日に仙台の佐藤進さんから記録映画を撮りませんかというメールが入ったこと、その日、高円寺で行なわれた反原発デモにでかけたこと、16日には震災後初の仙台入りをしたことなど、転々話をはじめました。学習会のそれからの展開やいかに? は山口報告に委ねます。

 さて、映画を撮っていた最中も上映活動中のいまも、3月11日以後の、被災地の教室(におけるこどもたち・先生)と、非被災地のそれとは、どのように繋がりあるいは繋がりえなかったのか、がうまく見えないもどかしさがつきまとってはなれません。さらに、ちょっと肩肘張ったいいかたになりますが、震災によって教育は変わるのか(変わろうとしているのか)、変わるとすれば(変わろうとしているのならば)どのように? それとも、それはまだ今後の作業なのか? そのへんのところを学習会でみなさんに尋ねてみたい、と考えていました。・・・まあ、こんな後出しじゃんけんみたいなことはヤメにしましょう。

 被災地の学校の夏休み。ことしは、石巻地方の一部の海岸で期間限定ですが、海水浴ができるそうです。津波と火災にやられた元の門脇小学校は、震災遺構として保存するか解体するか、門脇小保護者と地域住民、市民の意見は割れています。復興は遅々としてしか進んでいません。

 東日本大震災から2年4か月余りがすぎて、被災地はまだ揺らいでいます。いうまでもなく、被災当時の揺らぎとはことなりますが、その、被災地の「いまの揺らぎ」は非被災地からは見えづらくなっています。いや、現地でも見えない不安はひろがっています。被災地のこども・学校・地域の津波のあとの時間を非被災地住民はどのように共有するのか。わたしの関心事であり課題でもあります。そんなことに触れた文章や、さまざまな震後活動を、折々に綴ってみたいと思います。

  • (*)現代学校運動JAPANサイト
  • 映画「宮城からの報告〜こども・学校・地域」製作委員会ブログ 津波のあとの時間割公式サイト 震災発-青池組@宮城 映画「宮城からの報告〜こども・学校・地域」応援ページ
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