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青池憲司コラム眼の記憶11

石巻撮影報告 9/11
2011.9.14

前回、<明日は少年野球の大会があり、「門小ガッツ」が出場します。天気になるように応援してください>と書きました。おかげさまで、天気はよくなりましたが、試合は門小ガッツの負けでした。トーナメント方式なので次はありません。残念。

きょう(11日)で、東日本大震災から6か月の日日が過ぎます。門脇小学校は垂れ込めた雲の下にあります。新聞やTVは「節目」の日として「特集」を組んでいます。大きなメディアの重要な役割です。当地石巻門小前で聞いた住民さんの意見の多くは、「たしかにそうなんだろうけど、そういわれてもねえ。節目だなんていうのは、被災地の外の世間がいうことで、われらにとっては、きのうのつづきでしかないっちゃ」というものでした。わたしたちローカル撮影隊もそんな気分です。阪神大震災の復興の日日を住民さんとともに過ごした、わたしの経験からすれば、「節目」というのは、被災地と非被災地の「くらし」の乖離を容認する日にほかならず、半年目はそのはじまりです。それとともに「風化させてはならない」合唱が起ってきます。(今回の震災では国民全員が被災者だとの論がありますがタワゴトです)

『ローザ・ルクセンブルクの手紙』(岩波文庫版)を、また読んでいます。長いロケーションの際に持っていく本の1冊で、BenpostaでもKobeでも読んでいた記憶があります。いま気がついたのですが、これ、邦訳初版1刷が出たのは1932年5月20日なんですね。わたしが持っているのは1987年10月16日発行の改版21刷です。引用します。

「鳥類が秋になって南方へ移動する際に、鶴のような大きな鳥が、雲雀や燕やキクイタダキなどのような小さな鳥の全群をば、背中にのせて運んでゆくことがよくあるということをご存知ですか?! これはけっして子供向きのお伽話ではなく、科学的に確認された観察なのです。そして小さな鳥どもは、その際に、『バスの座席』で陽気にさえずり、たがいに慰め合っているのです! ・・・またこういう秋の渡りの際には、しばしば、猛禽――ハイタカや鷹や鳶――が、普通なら取って食べてしまうような小さい鳴禽類と一隊を成して旅行をするということ、そして、この旅の間は一種の神の平和(treuga dei)、つまり全般的な休戦が行われるということをご存知ですか?」(川口浩/松井圭子訳)

わたしは、『手紙』の、この一文を何度も読んでいるのですが、何度読んでも感動します。門脇小学校が、そして、被災地のすべての学校が、こどもたちにとって「鶴のような大きな鳥」であってほしいとのぞみ、世の中の「全般的な休戦」が、ながくながくつづくことをねがいます。

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