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青池憲司コラム眼の記憶10

第3回 大久保小学校再訪
2011.2.16

 2月10日、ひさしぶりに、大久保小学校(東京都新宿区大久保)を訪ね授業を参観しました。2000年に6年1組のこどもたちを1学期間撮影し、「国際化のなかの教室」というタイトルで発表しました(NHK教育テレビ『教育フォーラム』同年8月放送)。それからも折にふれ訪ねていましたが、授業の参観は撮影のとき以来です。大久保小学校の全校児童はいま約170人。その70%ちかくが外国につながるルーツ(両親あるいはどちらからが外国人)をもつこどもたちです。撮影したころはその比率が30%強でしたから、10年で倍になっています。

● SCENE1 大久保小学校at12:45pm

 大久保小学校は、1980年代後半から外国籍のこどもが増えはじめ、それにともなって、1990年4月に「日本語学級」を設置しました。学級は、試行錯誤を重ねながら継続し、2000年代半ばごろに「日本語国際学級」と改称して、さらに発展してきました。「国際」ということばを挿入したのは、さまざまなルーツをもつ児童に日本語を教えるだけではなく、彼/彼女らの母語・母文化をたいせつにしよう、という趣旨だそうです。上のシーンは、4年生の初級日本語のクラスで、学んでいるのは、来日8か月のフィリピン児童2名と5か月の韓国児童1名です。きょうの授業は、生活のなかで疑問に思ったことを3人で出し合い、アンケートを取って調べ、わかったこと、考えたことを報告文にして友だちに伝える学習です。

● SCENE2 大久保小学校at1:00pm

 3年生の初級日本語のクラスです。2010年5月と6月に来日したフィリピン人児童2名。日常的な会話はだいたいでき、文字はひらがなの学習を終え、1年生の漢字の読み書きが半分程度できるようになっています。いまは2年生の漢字を練習しているところで、本文のまま教科書を音読したり、内容を読み取ったりすることはまだ困難だそうです。きょうの授業は、身近な食べものについて調べ、短い文章で書き表す学習です。

● SCENE3 大久保小学校at1:15pm

 4年生の中級日本語のクラスです。来日1年から1年半の中国の児童2名とフィリピンの児童1名。日常会話はだいたいでき、漢字は3年生の漢字を学習しています。きょうの授業は、「しゃれ、なぞなぞ、回文」などことば遊びの世界から日本語のおもしろさを学びます。左端の児童の出したなぞなぞはほかの児童のみならず、参観のおとなもまきこんで、たのしい教室になりました。

● SCENE4 大久保小学校at1:30pm

「学級だより」は、タガログ語、韓国・朝鮮語、中国語、タイ語、スペイン語、英語、日本語の7言語で出しています。 大久保小学校の日本語国際学級の取り組みは、その考えかた、学習方法ともに先進的なものであり、外国人が多く住む地域の学校として、今後ますます多民族化する列島社会の学校の魁(さきがけ)といえます。

 公立の小中学校に日本語学級を設けることは、現代の教育の重要課題の一つですが、東京都にいま、それが何校あるか。都全域(市部ふくむ)で小学校19校、中学校13校(夜間ふくむ)です、たったの。新宿区の小学校は大久保小と西早稲田小の2校、中学校は1校もありません。ゼロです。日本語を母語としない児童生徒が急増するなか、これがわたしたちの隣人たちの現状です。

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