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青池憲司コラム眼の記憶09

第1回 阪神大震災15周年をむかえて
2010.1.10

 阪神大震災の被災地KOBEは、まもなく地震から15回の1月17日をむかえます。このコラムも例年どおり、復興途上にあるKOBEの話題から新しい年をはじめたいと思います。震災後、毎年、数々のメモリアル行事が行われてきましたが、ことしはとくに大きな節目ということもあって、KOBEはもとより全国各地で、「亡くなられた方の鎮魂と再生の日々をふりかえる」さまざまなイベントがあります。それも、例年のように1月に集中するのではなく、この1年をメモリアル・イヤーとして、通年的に催しが開かれるようです。それらの行事を知るには、Webサイト『震災発 http://www.shinsaihatsu.com/』をご覧ください。震災15周年イベント一覧が掲載されています。

 『震災発』は、阪神大震災の被害と復興プロセスに関するデータベースとして、わたしは高く評価しています。とくに、「震災リンク集」は、阪神・淡路大震災関連サイトのURLリンク集として、内容は、「データ」「レポート」「団体」「特集」「過去の震災リンク集」に大別されていて、そのリンク先は膨大といっても過言ではありません。また、阪神大震災以降の災害(中越、福岡県西方沖、能登半島、中越沖、岩手・宮城内陸)関係のURLにもリンクしていて、ここから入っていけば、それらの災害の概要をたどることができます。さらに、「震災ニュース」は、全国紙と通信社の記事が緻密に蒐集してあって、阪神大震災関連の情報源として、わたしには座右の書のようなサイトです。

 このサイトで見つけた記事の一つに関心をもちました。それは、共同通信が配信した2010年1月2日付の「大震災『復興していない』29% 神戸で100人調査」という記事です。それによると、「街の活気や経済、雇用環境が元通りになっていないことなどを理由に29%が被災地は『復興していない』」と答えています。もうすこし引用させてもらうと、「自分の生活についても22%が『復興していない』」、「『精神的なショックが続いている』とした人は35%」という回答になっています。この数字をどう見るか。これは、かなり、わたしの実感に近い数字です。わたしは被災地の住民ではありませんが、わたしもまた、いまだ庶民の復興ならず、と思っています。震災後の15年間を野田北部・鷹取の人たちとおつき合いさせてもらい、人びとの暮しを見てきた一人としての感想です。

 コラム「眼の記憶09」の第17回にも書きましたが、長田区にある神戸映画資料館で、<記憶のための連作『野田北部・鷹取の人びと』>(全14部)のうち「第1部」〜「第6部」と「第14部」(証言篇)、『阪神大震災 再生の日々を生きる』の8作品の上映会が開かれます。期間は1月16日から19日で、わたしも16日と17日の両日、会場でトークをします。館主の安井善雄さんには作品の撮影中にさまざまな協力をいただいたご縁があります。以前、大阪で発行されていた『映画新聞』紙上で震災と映画をテーマに対談したことなども思い起こされます。(上映の詳しい情報は神戸映画資料館のWebサイトhttp://kobe-eiga.net/でご覧ください。[阪神・淡路大震災15周年 神戸長田・まちと生活の再生 特別上映会]

 地元の人びとに「青池組」と呼ばれたわたしたち「野田北部を記録する会」が撮影した地域は神戸市長田区の1エリアですが、作品に記録されている「人とまちの復興のプロセス」は、阪神大震災の被災地10市10町のどこでもみられた出来事であり、起りえた物語です。映画は、かけがえのない命、家、財産などを一瞬にして失う災害に見舞われながらも、新しい時代を切り開いた住民活動を提示しています。この一連の作品群が多くのみなさんにご覧いただけることを願っていますが、とくに、阪神大震災の記憶の共有のために、若い世代に観てもらうことを望みます。震災15周年、わたしは、いつものように、17日の未明に野田北部の大国公園と、カトリックたかとり教会(元・鷹取救援基地)で鎮魂の朝をむかえます。

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