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眼の記憶08

第4回 津南町にて
2008.2.19

 先日の連休に新潟県中魚沼郡津南町へ行ってきました。一昨年の豪雪(積雪量4m16cm)で話題になった地域です。ことしは、一昨年はもとより例年に較べても雪はすくないとのことでしたが、それでも生活道路に1メートル半を越す雪の壁があって、関東者としてはおどろきでありました。ちなみに、きょう(18日)現在では2メートル半ほどの積雪量だそうです。この津南町で臨時教員をしている年若の知人がいて、彼の誘いで、日ごろの勉強仲間、あるいは呑み仲間10人とでかけた旅でした。上越新幹線の越後湯沢駅からその知人の車で峠を越えて十日町市を経て津南町へ入りました。津南町は、新潟県の最南端、千曲川が信濃川と名前をかえる長野県境にあり、人口約12,000人、高齢化率約35%という町です。  

 町に着いてまず昼食。みんな、迷わず、名物の“大名カツ丼”を注文しました。これは、濃い醤油味のカツ煮とご飯はもちろん魚沼産コシヒカリの丼で、両者の味が相まって、なぜ“大名”なのかは聞き洩しましたが、その味をわたしは気にいりました。食事後は町内観光で、町の南西から北東に流れる信濃川と、これに合流する志久見川、中津川、清津川の4河川によってかたちづくられた河岸段丘に案内してもらいました。雪に覆われた風景はモノトーンに沈んでいましたが、その雄大さはよくわかります。山と川、棚田、古くからの集落が点在するこの広大な地域で、「大地の芸術祭―越後妻有アートトリエンナーレ―」が2000年から開かれています。トリエンナーレですから3年に1度です。十日町市と津南町の里山に世界中のトップ・アーティストたちの作品が展示され、過去3回、毎回20万人以上の観光客が訪れたそうです。「地域づくりと美術を結びつけた大地の芸術祭」というのが主催者(大地の芸術祭実行委員会/委員長は開催時の十日町市長)の意図ですが、知人の話では、「アーティストと観客は国内外からやってきたが、地元住民の参加態勢がいまひとつ」とのことでした。しかし、まだ3回です、はじまりはどこでもそうではないでしょうか。都市型ではない、山川里型の地域づくり芸術祭の発展を期待しています。

 暮れどきに宿に着き、温泉に入り(甘露な湯でした)、夜の呑み会で話題になったことの一つに、「農山村の結婚難」がありました。これはいまにはじまったことではありませんが、わたしの知人も男の適齢期なので、そんな「難」の渦中のひとりになりつつあるようです。ご多分に洩れず、この地域でも日本人女性の「嫁」の来手がすくなく、フィリピン人と中国人の「嫁」が多くいるそうです。その数は年々ふえていく傾向にあります。知人の小学校にはそんなカップルのこどもたちがいます。行政の主催で日本語講座も開かれています。結婚だけでなく、町の産業の「労働力」として外国人研修生・実習生が入ってきています。これもことさら目新しいことではありません。介護の現場にも外国人の労働力が必要とされています。そんな話を聴くにつけ、日本列島社会は、都市であれ農山漁村であれ、「仕事も暮し」も、あらゆる生きる領域が、外国人との共住恊働共生なくしては成り立たなくなっている、という実感があらためて幾重にもしてきます。いや、それはもはや外国人とか日本人とかではなく、人種や国籍を越えた「人と人、地域と地域」の結び付き(インターコミュニティ)といったほうがいいかもしれません。十日町市と津南町における「地域づくりと美術を結びつけた大地の芸術祭」(移動と交流)や、「アジアの国々の女性との結婚」(越境と定住)の事例からは、新宿・歌舞伎町・大久保などの都市型とはまたちがった多文化列島ニッポンのかたちが見えてきます。

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