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眼の記憶08

第2回 厳寒の被災地KOBEから(3)
2008.2.10
静かな熱気と緊張感につつまれた会場
写真 静かな熱気と緊張感につつまれた会場

 ことしの1.17被災地KOBEでの出来事をもうひとつ。1月20日、JR新長田駅近くのアスタくにづか2番館106スペースを会場にして、『まちの記憶・・・震災前・震災後[私たちの震災の記録]』という催しがあった。どんなイヴェントだったのか。主催者(新長田まちづくり株式会社・神戸映画資料館)の次のような呼びかけ文がある。「阪神大震災から13年の月日が流れました。/神戸のまちは新しい建物が並び、震災前とはすっかり様変わりした地域もあります。そのまちに暮らす人々も、かつての町並みを記憶しているつもりでありながら、実際には、その場所の以前の姿を思い描けないことも多いかもしれません。では、震災後の身の回りの状態についてはどうでしょうか。/震災時のつらい状況は忘れたくても忘れられないものがあります。しかし少し落ち着きを取り戻しつつあるころ、ふと見回したまちのあまりの変貌に驚き、それをビデオカメラで記録した人もおられるのではないでしょうか。そういう映像を持ち寄り、みんなで見て、震災体験について語り合いたいと思います。」。阪神大震災で被災した住民自身が地震の直後にあるいは数日後に、自分たちの身のまわりや自分の住むまちの状況を撮った映像を集めた上映会である(写真)。

 わたしは、この企画に協力をもとめられて若干のおてつだいをした。当日も参加して短いお話をした。上映した映像は12本。1本は16ミリカメラで撮ったフィルム映像、11本は家庭用のヴィデオカメラで撮影したヴィデオ映像である。いずれも、当事者が、きわめて個人的な視点で身近な被災状況を記録した映像として貴重この上ない。上映会では、撮影したご本人あるいは家族の方または関係者が映像の解説をした。撮影者がすでに亡くなられている場合もあって、震災後13年の時の流れをあらためて感じさせられた。観客は、氷雨模様の悪天候にもかかわらず300人を越えた。以下、上映した12本の映像をかんたんに紹介して備忘としたい。列記の順番は当日の上映順。すべて未編集の映像でタイトルはなく、撮影地域と撮影者(映像提供者)を併記した。

1「住吉から三宮へ」。撮影者は安井喜雄さん。16ミリフィルム映像。安井さんは、上映会を主催した神戸映画資料館の代表。神戸市の東灘区住吉から国道2号線を歩いて中央区三宮までの被害状況を撮っている。歩く人はみんな防寒着で着ぶくれし、背中にはリュックサックという、いわゆる被災地ルックである。

2「長田」。撮影者は木村忠夫さん。ヴィデオ映像(以下すべて同じ)。震災の日の朝、長田区長田の自宅ヴェランダから撮った白煙のあがるまちや、半壊状態の家のなかの様子が冷静に撮影されている。

3「六甲周辺のまち」。撮影者は谷通好さん。灘区のJR六甲道周辺のまちの被害の様相やアマチュア無線での被災状況の交信、電車開通の日などが記録されている。

4「中央区のスケッチ」。撮影者は吉田正信さん。吉田さんが親しんだ行きつけの喫茶店やそごう百貨店、異人館などの震災から1か月後の様子。この映像だけは編集されていて音楽も付けられている。

5「芦屋」。撮影者は杉浦政次さん。芦屋市内の震災当日の模様。2階が1階になってしまった家など、芦屋のまちの被害が見える。

6「東灘」。撮影者は柴田雄信さん。柴田さんは震災当日はグアムにいた。東灘の自宅は半壊。グアム帰りの最寄り駅周辺からカメラを回している。自宅の解体〜再建を記録している。

7「新長田から南駒栄へ」。撮影者は佐野木弘之さん。長田区の新長田駅周辺から大正筋商店街(この上映会が行われている辺り)を経て南駒栄公園まで。南駒栄公園はヴェトナム人被災者が多く避難した。

8「南京町」。撮影者は本田裕信さん。震災後の春節(中国の旧正月)を迎えた神戸・南京町。無料あるいは格安で振る舞われるご馳走の数々。被災地に元気を! 南京町あげての活気が印象的に記録されている。

9「西宮〜芦屋」。撮影者は山田重夫さん。西宮から芦屋間の道路の状況。消防車や救急車のサイレン、緊急自動車の列。倒壊した阪神高速道路など。

10「長田の郵便配達」。撮影者は高田知幸さん。郵便局員である。全国の同僚から支援を受けた長田郵便局の職員が、そのお礼の一環として、震災4か月後のまちの様子と郵便の配達状況を記録した。全壊半壊の家にも配達に行くが受取人はいない。避難先を探す手掛りもない。震災のまちで悪戦苦闘する配達員を高田さんのカメラが追う。

11「新長田から鷹取へ」。撮影者は松崎太亮さん。松崎さんは当時神戸市役所広報課の職員で、カメラを持って外出した。長田区の本町筋、大橋9丁目、新長田駅近く、JRの線路上、野田北部・鷹取地区など、17日の夜と翌日のまちを記録している。撮影場所の地名・状況を同時音声で克明に説明している。

12「野田北部・鷹取」。撮影者は藤本富夫さん。長田区野田北部・鷹取地区の1月21日の記録。自分の生活地域の被災状況を丹念に撮っている。同時音声の説明がじつに臨場感にあふれている。

 これら12本は被災者自身が記録者であるという点できわめてユニークな映像である。それぞれに、撮影者の、身近な人への・身近な事物への・身近なコミュニティへの親しい視線(感情)があふれている。どの映像も数時間以上撮影されている。わたしが見たのはそれを主催者が約10分に抜粋したものである。これらの映像は撮影者自身と家族にとって貴重なものであることはいうまでもないが、彼らが住むコミュニティにとっても、さらには、非被災地のわたしたちにとっても重要な記録であることも自明である。私蔵するだけでなく、ぜひ、公共のアーカイブとして保存・公開したい。

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