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眼の記憶08

第15回メキシコ遊行/博物館がおもしろい
2008.8.31
写真1 革命記念塔

 メキシコ・シティの地下鉄2号線のRevolucion駅近くに「革命記念塔」はある。駅の改札口から地上へでて、さてどっちへ行ったものか、と思案していると、いっしょに上がってきた高校生とおぼしき少年少女がキオスクのおばさんに、記念塔へ行く道筋を訊いている。かれらが笑いながら体をぶつけあいながら喋りながら行く後について5分ほど歩くと、濃い緑の街路樹の向うに石造りの塔が見えてきた(写真1)。大きなアーチ式の塔は法務省の建物になる予定だったが、1910年に開始されたメキシコ革命によって建設が中断され、そのご革命のモニュメントになったという。塔上部の外側に、革命運動の英雄や農民、労働者を象徴する彫刻がほどこされていて、展望回廊がある。アーチの裾の二方面はなだらかな傾斜の広場になっている。そこから塔を見上げていると、町内の顔役といった感じのおじさんから声がかかった。「きょうは日曜日で、塔も博物館も入場料はタダだから寄っていきなよ」。Gracias, Senor!

 アーチの四柱基部の一つが塔上への入口になっていて、扉をくぐると鉄製の階段がある。裸電球に照らされた薄明かりのなか、カンガラドンとぎょうぎょうしい音をたてて登って行くこと約二百数十段、塔の8合目あたりに着く。そこから外へでると展望回廊で、メキシコ・シティの四方が見わたせる。回廊を一周する。ここからほぼ真東にある42階建てのラテンアメリカ・タワー以外、いわゆる超高層ビルは見あたらない。けっこうなことだ。回廊をもう一周する。海抜2240メートルの高地に位置するシティ(地元の人は首都をこう呼ぶ)の青い空と白い雲。日射しはつよいが乾いた風が心地よい。日本でえていた情報とはちがって、メキシコの朝夕は涼しい、いや、寒いくらいだ。昼間はTシャツ、朝夕は厚手のジャケットというのが、ここの人たちのいまの季節(雨季)の服装である。日本の冬装備の人もいる。革ジャンのセニョリータが、それを脱ぎ捨てると、タンクトップなんていう光景はざらだ。Hay que ver para creer. 信じるためには見なければならない=百聞は一見に如かず、である。

写真2 国立革命博物館正面

 革命記念塔に隣接して「国立革命博物館」がある(写真2)。革命前夜から革命運動期の政治・経済・社会状況の展望をベースにして、当時の農民、労働者の生活と仕事、かれらが参加した革命行動の様相、デモや
写真3 サパタ(右)とパンチョ・ビリャ(左)
ストライキや戦闘、使われた武器、などの資料文献が、実物、写真、絵画、風刺漫画、ポスター、新聞記事、ジオラマ、ヴィデオ映像などで多面的かつ視覚的に展示されている。博物館の規模としては中規模のテーマ博物館だが、展示物が国民的英雄に関わるものだから、館内は家族づれや若者たちで賑わっていた。人気はサパタとパンチョ・ビリャのコーナーで、小学生くらいのこどもたちが両親の説明を熱心にきいていた。
写真4 パンチョ・ビリャが身につけていた帽子、ガンベルト.弾帯、水筒など
わたしのお目当てもこの二人で(写真3、4)、こどもたちといっしょになってたのしんだ。われらの水先案内を務めてくれた高校生たちも、鉱山労働者のデモを伝える大きな写真パネルのまえで(写真5)、真剣な表情でノートをとっていた。夏休みの自由研究か。

 今回のメキシコ旅行では、数多くの博物館と美術館を訪ねた。巨大規模の「国立人類学博物館」から中規模の「近代美術館」、小規模の「ディエゴ・リベラ壁画館」などほかである。

写真5 鉱山労働者のデモ

それらのいずれもが開放的で親しみやすく、観覧者に権威の押しつけや余計な緊張感をしいる雰囲気がまったくなかった。展示空間が広くとられ、そこここに休憩用のベンチが置かれている。また、国公立施設の入館料は60歳以上無料や日曜日無料開放などのサーヴィスもととのっていて、どの博物館も家族全員で訪れた観覧者であふれていた。夏休みということもあるだろうが、広く市民に開かれている、という印象をもった。60歳以上無料制度は外国人旅行者にも適用されて、わたしもそれを利用させてもらった。さらに、日本の博物館や美術館では展示物の写真撮影は不可の場合が多いが、メキシコでは、フラッシュ禁止以外なんの制限もなく写真が撮れた。これにはうれしくもびっくりであった。わたしの小さな体験にすぎないが、展示方法の平易・明解さはもとより、サーヴィスもふくめて、この国の博物館行政は相当に質が高いと思う。メキシコは博物館がおもしろい。

(つづく)

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