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コラム「Circuit 07」青池憲司

第23回 金曜の夜と月曜の朝
2007.7.18

 新宿区の一角、早稲田鶴巻町にある「風待ち喫茶」へ行く。ここは、地域のコミュニティ・サロンというか溜り場というか、とにかく気ままにしていられるスペースである。金曜日の夜は酒が呑めて、手づくりのミャンマー料理が食べられるので、ときどきでかける。また、この店には老若男女さまざまな職業の人物が集るので、酒食とともに、わたしには彼らとの一献がたのしみである。今夜は、テキ屋のげんさん、不動産屋の山さん、ジャーナリズム専門学校に通う舞ちゃん、自称主婦のヨーコさんの顔があった。ふつうの呑み屋ではこういう顔揃えはなかなかない。みんな、呑みはじめたばかりなのだろう、昼間の顔がのこっている。わたしも焼酎をロックで一杯。

 喉が潤って一息つくと、酒席の話題は時節柄参議院選挙になった。「新聞の投稿短歌欄にね、こんな歌が載っていたわ」とヨーコさんが口火を切った。「『無表情なカメラ目線の為政者の企み潜める不気味な眼』っていうの」。「それって、安倍さんのこと?」と舞ちゃん。「うん、いえてるね。お見事」と山さんがグラスを挙げた。「選挙がはじまって、ますます不気味さが増してるね」とげんさんがつづける。わたしも同感である。多くの人が、いや、だれもが、共感をもって、うなずきながらこの歌を読んだのではなかろうか。「安倍ノッペラ坊ちゃんの生色のないガラス玉のような目。それにくらべたら、庶民の眼力はさすが」とヨーコさんの声がいちだん高くなるが、まだ酔うほど呑んではいない。「それにしても、“オノレの実績”たらをいいつのるときの、あの裏返った声、なんとかならないの」と舞ちゃん。山さんが受けて「空言がさらに空疎に聞こえるね」。「安倍首相はことあるごとに“私の内閣”、“私の内閣の使命”と声高だが、内閣ってのは総理大臣の私物なのかい。耳障りでならねえや。いっそのこと、その“私の内閣”とやらを消してやろうじゃないか、こんどの選挙で」とげんさん。庶民は眼力のみならず耳力もたしかである。

 ここまで書いてきたときに地震があった。16日、月曜日の午前10時13分ごろである。東京湾に近いわたしの所でもけっこう揺れた。揺れたな、と知覚したほとんど同時に、わが家でいちばん頑丈な食卓の下にもぐりこんだ。最近はこのうごきが身についてきた。しばらく横揺れがつづいた。・・・・ゆっくりとつづいた。わたしは近年とみに揺れに弱くなっている。つよい人などいないだろうが。
 (夜のTVニュースで「新潟県中越沖地震」と名付けられた地震の被害の大要を知った。8人の方が亡くなられていて、いずれも高齢者である。被災地を3時間視察した安倍為政者の慰問の声かけに、女性被災者の応答は「わたしはひとり住いで年いってるから、頼りになるのは年金、それが心配・・・・」というものであった)。


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