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コラム「Circuit 07」青池憲司

第19回 鷹取での2日間(4)
2007.6.23
台湾・新故郷文教基金会のみなさんとの交流会
▲台湾・新故郷文教基金会のみなさんとの交流会

 コラム内の時間はまだ5月26日の夕刻である。わたしは、せっちゃん(河合節二さん。野田北部まちづくり協議会と野田北ふるさとネットの両団体の事務局長)や、せっちゃんのお仲間の岡田さん、太田さんたちと、森下酒店の立ち呑みでまだのんでいる。酒の肴に、身の回りの出来事や世間のあれこれを取り上げて馬鹿話をする。話題がマジでも、けっして話し振りを四角四面にしない。交わすことばにストレートもあれば変化球もある。キャッチボール、いや、ことばの蹴鞠である。直球曲球の応酬でどこまで馬鹿噺(ばかっぱなし)のラリーをつづけられるか。これがけっこうアジな酒の肴になって、せっちゃん流にいえば、酒呑み(男たち)のコミュニティができあがる。近年は女性の酒呑みも増えたが、この店で顔を見るのはまだまだ稀である。

 そろそろ時間だ、とせっちゃんから声がかかり、新長田の焼肉屋へ向かった。台湾からのお客さん、廖嘉展新故郷文教基金会理事長ご一行の歓迎会と交流会である(写真)。野田北部の人たち、新施設を設計した坂茂建築設計のスタッフ、ペーパードームの台湾移築を支援した建築家やまちづくりプランナー、市と県の行政マンなど、この円居(まどい)もまた多士済々である。なんでここにいるんだろう、という面持ちでウクレレの伊達伸明さんもいる。そういうわたしもおなじような心持ちである。こういう融通無碍な雰囲気が野田北部や鷹取の町場のいいところで、なにかの拍子に縁の生じた人なら、そこにいるのがあたりまえであろうとたまたまであろうと、みんなでいっしょになって、わいわいがやがややってしまおう、という仕切りである。そんなこの地域の特徴は、阪神大震災後の復興まちづくりで培われてきたものではなかろうか。

 台湾南投縣埔里鎮桃米里で移築工事が進んでいるペーパードームが完成したら、9月21日の落成式にはみんなで出かけようと交流会はもりあがった。それがはねて、野田北部へもどると案の定、もう一軒行こう、の合唱である。なにが案の定なものか、おまえ(わたし)がそそのかしたのではないのか。かもしれない。ま、いずれにしても、身体虚弱意志薄弱のわたしは、だれかに引っぱられ押し上げられして居酒屋の階段をのぼった。いやはや。店内に入ると、ガーン! なんとそこには、かんちゃん(神田裕神父)をはじめとして、信徒さんたち、日比野純一さん(FMわぃわぃ代表)、吉富志津代さん(多言語センターFACIL代表)、たかとり教会の新施設を施工した清水建設の人たちなど教会・TCC(たかとりコミュニティセンター)組がいたのだ。新施設の感想をいえば、わたしは、この建築物にいわゆる教会風の美がないところが気に入っている。一見するかぎりでは、この建屋が何屋さんかわからないことも、気に入っている。中の中どころの会社の事務所? モダーンなモノつくりの作業所? 地域の人たちはいまのところ
たかとり教会玄関。正面奥が聖堂
▲たかとり教会玄関。正面奥が聖堂 (連載16回より)
なにがなし違和感をもっているようだが、器(建物)の印象がなんであれ、ちょ っと入ってみよかと、人の気分を誘うかどうか、それはひとえに、器物のなかみの諸兄諸姉の器量にかかっているであろう。かんちゃんは「ここは会員制のクラブではなく大衆食堂だ」といった。その言やよし。

 わたしが、野田北部・鷹取で呑んでいて、ふだんと決定的にちがうのは終電を気にしなくてよいことである。わたしは、野田北ゲストハウス(野田北ふるさとネット事務所2階の住居部分)を鷹取での定宿にさせてもらっている。呑み仲間の大方は地元ないし近隣地域の人であるから歩いてかえることができる。時間を制限するものがないから、ときに、もう一軒行こう、が連発されてしまう。この夜もそのパターンで、行き着いたところはカラオケであった。ふだん、わたしは、みんながカラオケへといいだすと、そそくさとかえってしまうのだが、この夜はなぜかわからないがなぜかちがって、同行した。人がうたう歌を呑みながら聴いているのもいいものだ。わたしは、自分では一言半句もうたわないくせにリクエスト魔で、同席者にあれうたってこれうたってと強要する。かんちゃんに『五番街のマリー』を、ウクレレの伊達さん(彼も今夜はゲストハウスに泊る)に『悲しい色やね』を所望した。ふたりはこころよくうたってくれた。ともに、震災直後の鷹取救援基地で焚火をかこみながら、かんちゃんやみんなでうたった歌である。



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