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コラム「Circuit 06」青池憲司

第11回 4月5日の集会をめぐる対話
2007.4.11
▲(右より)ナディさん、筑波君枝さん、山田泉さん
会場では活発な意見交換が行われた

 4月6日、新大久保駅ガード脇のロッテリア2号店、いつものように、わたしと、自称“大久保の探偵”こと便利屋ヤクモのふたりがうすいコーヒーをすすっている。「昨夜の集りはなかなかよかったね」とヤクモ。昨夜の集りとは、新宿区大久保の地域センターで開かれた、映像とトークの会『すべての子どもたちに未来を!〜真(ほんとう)の「多文化共生」社会の実現を目指して〜』(共催・Asian Peopleユs Friendship Society/在特行動記録委員会)のことである。(集いの趣旨についてはこのコラムの第8回に書いたのでご参照ください)。

 わたし「参会者の顔ぶれがよかったね。当事者の非正規滞在外国人家族を中心に、かれらが抱える不安と困難をおなじ住民隣人として助けている人たち、市民グループやNPO団体などの支援者たち、この問題に関心をもち学ぼうとしている学生や若い社会人たち、教師、弁護士、ジャーナリストなど、じつにさまざまな分野、職業、年齢の人たちが集ったね」。ヤクモ「うん、80人を超えていた。このての集会は、ともすると決意表明の競い合いみたいになってしまいがちだが、そうではなかった。だれもが自分の実感と自分のことばで語っていたね」

 集会の第1部は、昨年9月24日の、在特家族会と市民の共同行動を記録したヴィデオ『在留特別許可を求めて〜2006・9・24 東京入管へ〜』が上映された。(このヴィデオはAPFSで販売している)。第2部は、3人のパネリストの発言からはじまった。法政大学キャリアデザイン学部教授の山田泉さんはこの問題の専門家の立場から、フリーライターの筑波君枝さんは支援活動とその取材をとおして、亜細亜大学の学生で在日イラン人のナディさんは非正規滞在から在特を得て現在にいたる体験をもとに、それぞれの意見を述べた。そして、そのごに会場からの発言をまじえて活発なディスカッションが展開した。

 (以下の二重鍵括弧『 』内の3人の発言はすべて要旨。文責は筆者)。
 ヤクモ「山田さんの『非正規滞在外国人労働者家族を、それだけの理由でかれらの母国へ帰すことが、日本社会にとって合理的なことなのか』という発言が印象にのこったね」
 わたし「うん。かれらは、実質的にはすでに列島社会の構成員だからね。かれらが日本を必要とすると同時に、列島社会もかれらを必要としている」
 ヤクモ「山田さんの意見でもうひとつ、『(非正規滞在の)こどもたちを受け入れる地域の側の能力が問われる』ということばにも頷かされた」
 わたし「こどもたちの受け入れももちろんだが、正規・不正規を問わず、在日外国人との共住共生は行政の問題である以上に、わたしたち地域住民の課題なんだよね。これまでのコミュニティ(まち)づくりは、外国人を視野に入れていなかった」

 ヤクモ「筑波さんの『(非正規滞在の)こどももおとなも将来の展望を描けないことが最大の不安』という発言に、おれのきもちが共振したね。非正規滞在者だけでなく、おれだって不安だよ、いまの列島社会は」
 わたし「うん。筑波さんの意見にはジャーナリストとして視点はもちろんのこと、生活者のこまやかな眼差しがあって、わたしはとても共感している。それと、彼女は非正規滞在家族の支援活動もしていて、わたしは、昨年秋以来、アミネ・カリルさん一家の入管行動の場で顔を合わせていた。話をしたのは今回がはじめてだが」
 
 ヤクモ「ナディさんは両親と16年まえに観光ヴィザで来日して非正規滞在となり、そのご在留特別許可(在特)を取得して5年になるそうだが、集会の短い時間のなかで、非正規滞在時期の不安と在特取得のよろこび、また、彼女の家族とおなじような条件・状況にありながら国外退去処分になってしまう非正規滞在者への心づかい、さらには、その決定が行政当局の“恣意”としか思えないかたちでなされることへの憤りを語っていた。おれは感銘をうけたね」
 わたし「うん。日本で教育を受けたこどもが、それが母国とはいえ、強制的に帰国させられてしまうことは、入管にとっては法的技術的な問題だが、そのこどもにとっては人生の問題でありつまりは人間の問題である、という意味のことを彼女はいったが、鋭い指摘だと思う」
 ヤクモ「在特が出たとき、『あ、これで医者へ行ける、と思った』なんて、おれはグッときたね。健康保険がないから医者にかかるような病気や怪我をして親に経済的な負担をかけたくない、ということなのだが、おれはこういう感受性に弱い」

 パネリスト3人のそれぞれに打ち解けた話と身近な問題提起に、会場から積極的かつ実感的な対応があった。とくに若い人たちの反応がよかった。ここにすべてを記せないが、「同一家族でありながら、母親(中国人)が再婚した父親(元中国残留孤児)との血のつながりがないという理由で在留資格を取り消され、2度も入管に収容された」女子学生の話、「当局に摘発されて収容された女子学生の入管内“監獄”体験談」など、緊迫感あふれる報告がつづいた。また、なぜ非正規滞在者の在留が許されるのかよくわからない、あるいは、わたしは知識がないので教えて、という若い男女の質問があった。それは、真剣で率直な問いかけであり、わたしは好感をもった。かれらに答えるナディさん、山田さん、筑波さんのていねいな態度も印象にのこった。こうした意見の交換は今回の集りの、よかったことのひとつ、ではないか。ヤクモがいう「このての集会」にありがちな関係者だけの集りではこんな議論はできない。「よくわからない」人、「知識がないので教えて」という人が参加していることで、その場は活性化し、運動はさらに開かれていく。

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