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コラム「Circuit 06」青池憲司

第28回 非正規滞在ということ
2006.11.29
アミネ・カリルさんと弁護士と支援者たち(入管前で)
▲アミネ・カリルさんと弁護士と支援者たち(入管前で)

 9月24日に、「在留特別許可を求める非正規滞在家族会」(在特家族会)とASIAN PEOPLEユS FRIENDSHIP SOCIETY(APES)が行なった東京入国管理局へのデモンストレーションについては、このコラムの第26回にかいた。その日の行動と、その前後の家族会のうごきがヴィデオ記録になった。タイトルは、『在留特別許可を求めて〜2006・9・24 東京入管へ』。制作は、APFSと有志でつくる在特行動記録委員会。28分の短篇である。(12月初旬にAPFSから発売される)。

 その在特許可を求める直接行動から1か月半ほどして朗報があった。在特家族会のメンバーで、フィリピン人のディーン・パニス・リモンさん一家に在留特別許可がでたのである。4人家族全員が非正規滞在であったので、ディーンさんはもとより、おくさんのチャリティーさん、中学1年生のアビゲールさん、小学1年生のクリスチャンくんのよろこびはひとしおであった。おなじ日に、やはり在特家族会の一員であるイラン人のアミネ・カリルさん一家の仮放免1か月延長の決定があった。11月10日のことである。

 アミネ・カリルさんは1990年に短期滞在ビザで入国し、非正規滞在者となる。翌年におくさんと長女のマリアムさんが来日した。マリアムさんはいま高校3年生、日本で生まれた次女シャザデさんは小学4年生。一家は2000年に国外退去処分を受け、その取り消しを求めて提訴。03年の一審(東京地裁)判決で主張を認められたが、二審で逆転敗訴。ことし10月10日、最高裁の上告棄却で一家全員の強制退去処分が決定した。アミネさん一家は、法務大臣が特別に在留を許可する「在留特別許可」を求めて再審を申し立てていた。

 11月10日に、国外退去を猶予する仮放免の1か月延長を認められてほっと一息ついたのもつかのま、21日になってアミネさん一家の将来に暗雲が垂れ込める。長勢甚遠法相が閣議後の記者会見で、一家の在留特別許可について否定的なコメントをだしたのだ。それは、保育士を目指して来春から群馬県内の大学への進学が予定されているマリアムさんが、長勢大臣宛にだした、「わたしの国は日本です。在特を認めてほしい」という手紙について、それを読んで許可を認めるかという記者の質問にたいする答えである。

 長勢法相のコメント概要。「(11月)10日でしたかね、出頭していただいて、帰国されるように要請したと聞いています。その際。強制退去を取り消してほしいという要望があったと、それにあわせて手紙を届けたっていうふうに報告を聞いています。(マリアムさんは)三つの時から日本にきているんですね。大学ですか短大ですか、行くことになるんで置いてほしいという要望の文書であります。最高裁でも決着のついた問題ですし、いろいろと事情があるにせよですね、きちんとした対応をすべきことだと原則的には思っています。人権だ、人道だという話はもちろん大事な問題ですが、だからといって法律を破っていいという話になるのか、ならないのかは慎重に考えなきゃならない問題でですね、人道だ人権だといえばなんでも法律を破ってもいいんだということにはならない。12月8日までは(強制退去を)猶予したようですので、そこは理解してもらわないといかんのかなと思っています。」

 無残なり、というのがこのコメントに接してのわたしの感想である。法行政の長としての知性も、社会の構成員としての人情も磨耗鈍摩しているヒトのことばである。それはさておき、長勢法相と日本政府は、日本語を話し、日本の文化で育ち、いまも成長しつつあるふたりの少女をふくむアミネさん一家をこの列島から「追放」しようとしている。入国管理法に違反しているとはいえ、来日以来16年を家屋解体や建築現場でまじめに働き、母国の両親に仕送りをし、日本で家庭をつくり、住いする地域にもとけこんで生活している定住外国人家族にたいして、(国外強制退去が現実になるとしたら)、非道以外のなにものでもない。世界的なスタンダードに則っても暴挙であり、人間の破壊というほかないであろう。

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