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コラム「Circuit 06」青池憲司

第23回 東武東上線大山界隈
2006.8.28

 池袋から東武東上線各停で3駅、大山の商店街を歩く。下り電車の改札口を出て踏切をわたる。そこから商店街がまっすぐに延びている。道幅およそ8メートルのストリートは広すぎもせず、両側の建屋に高層がないので圧迫感もなく、ぶらぶら歩きがきもちよい。呑み屋と飲食店が多いのはほっとするし、商店街に本屋があるのはなによりうれしい。人の歩きと自転車の走りがほどよい流れとなって、このストリートの雰囲気をつくっている。新宿の大久保や百人町の商店街がもつ焦れてくるような忙しなさも好きだが、それとくらべて、一段ギアをおとした感じのこのまちのモーションが気にいった。

 すれちがう人たちのなかには、アジア系の外国人がいて。このまちにはフィリピンや南西アジアからの人が多いという。そのこともこのストリートの雰囲気に影響しているのかもしれない。大久保や百人町のアジア人は韓国と中国が多い。それぞれのことばの語感、身振り手振り身体アクション、などがまちの彩りに個性をそえている。そんな気がする。まちは、そこに住む人働く人、通勤通学する人たちの感受性の外延にかたちづくられるが、その人が何(国)人であるかを、まちが問うことはない。単一でないほうが造景はあざやかになる。

 どのまちのどのストリートにも、といっていいほど外国人の姿がある。法務省が発表した外国人登録者統計によれば、日本に住む外国人の数(登録者数)は昨年末に201万人を超えた(総人口比1.57%)。これは県別人口21位の岡山県より多い。そのうちの80万人以上が定住者であり、さらに増えつづけている。一方、非正規滞在者(いわゆる不法滞在者と呼ばれる人たち)は22万人を数える。不法滞在=犯罪の温床という乱暴なキャンペーンがひところなされたがいまも深く静かにつづいている。都内のみならず全国あらゆるところで摘発の嵐が吹き荒れ、とくに目立つのは非正規滞在家族の摘発だという。

 7月30日のこと、わたしは大山の商店街を抜けて板橋グリーンホールへ向かった。第20回のコラムで紹介したAPFS(ASIAN PEOPLEユS FRIENDSHIP SOCIETY)主催の『「在留特別許可の可能性」と「可能性としての在留特別許可」』というシンポジウムを傍聴するためである。非正規滞在者の実情と摘発の実態を知りたかった。参加者の大多数が当事者の外国人で、かれらのこの問題への関心と切迫感が会場にみなぎっている。催しの報告は主催者のWebサイトにゆずるが、この日に結成された「在留特別許可を求める非正規滞在家族の会」(在特家族会)のことをかんたんにかいておきたい。

 APFS会員のなかから、在留特別許可を求める5か国(イラン・パキスタン・ビルマ・フィリピン・中国)の19家族50人が集ってつくったのがこの会である。どの人もどの家族も、日本でまじめに働き、長年暮してきて、仕事も地域での生活基盤も安定している。在特家族会には小学生の子どもがいる家族も多い。日本で生まれ育ち、日本人の友だちに囲まれて学校生活を送る子どもたち。では、家族ぐるみで摘発されるとどうなるか。父親は収容されて退去強制手続きとなる。なかには母親まで収容、子どもは児童相談所の一時保護センターにあずけられるケースさえある。

 小・中学生がいる家族に逃亡のおそれなど、まず考えられない。15年まえに来日し、非正規滞在で摘発されて1年と2週間収容され、さいきん仮放免となったイラン人男性の発言。「働き手が中にいたらだれが家族の面倒を見るのか。仮放免制度を利用し収容せずに在宅で手続きを進めればよいのだ」。前段のことばを入管職員に向けると、職員は、それはあなたの問題だ、と切って棄てたという。在特家族会とAPFSは、入管行政に公正で人道的な対応を求めるために、収容されている親に声援を送るために、そして、全員の在留特別許可獲得を目指して、9月24日に東京入管包囲デモンストレーションを行う。

以下、呼びかけビラからの抜粋。

9/24東京入管包囲デモへ!

 日時:2006年9月24日(日)午後1時
 集合場所:芝浦中央公園(品川駅下車徒歩5分)

スローガン

  • 子どものいる非正規滞在家族に在留特別許可を認めろ!
  • 仮放免を認めて必要のない収容をやめろ!
  • 在留特別許可の弾力的運用で非正規滞在者の合法化を!
  • 人道的な見地に立った入管行政を!
  • 差別のない自由で公正な多文化共生社会を実現しよう!
主催:在留特別許可を求める非正規滞在家族の会(在特家族会)
   ASIAN PEOPLEユS FRIENDSHIP SOCIETY (APFS)
TEL 03-3964-8739 FAX 03-3579-0197

 わたしは非正規滞在をアプリオリに認めるものではない。しかし、そうなってしまった、ならざるをえなかった人たちの、すでに日本の社会に根を下ろしたかれらの現在と将来を考えれば、それは、多文化な共生社会を目指すわたしたちの問題であり、その点で、9/24行動を支持する。


*関連リンク

  • ASIAN PEOPLEユS FRIENDSHIP SOCIETY (APFS)
     http://www.jca.apc.org/apfs/
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