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青池憲司のコラム 眼の記憶

2003年11月15日

シンポジウムパネリスト月8日、調布市へ行ってきました。『調布まちづくり 上映会とシンポジウム』なる催しに出席するためでした。はじめに、関東以外にお住いの方のためにご案内すれば、調布市は、新宿から京王線の特急電車で14分、人口約20万人の東京の郊外都市です。さいきんでは、サッカーの「FC東京」と「東京ヴェルディ1969」のホームスタジアム(味の素スタジアム=東京スタジアム)のあるまちといったほうがとおりがよいかもしれません。

民主体のまちづくりを目指して」をテーマとするこの日の集りの趣旨は、開催お知らせのチラシから引用すると次のようになります。「近年、日本各地で“市民主体のまちづくり”を目指した動きが、活発になって来ています。そして調布市では今、京王線の地下化に伴い、“まち”の姿が大きく変わろうとしています。しかし、それは周辺地域の住民だけの問題ではありません。駅前広場の形態や駐輪場の整備など、全市民的な問題を多く含んでいます。“市民主体のまちづくり”に取りかかる良いチャンスです」。

の趣旨に添って上映された映画は、記憶のための連作『野田北部・鷹取の人びと』第1部です。そして、阪神大震災後の復興まちづくり、コミュニティづくりを参考にして、調布のまちづくりを考えるシンポジウムが行なわれました。パネリストとして、被災地KOBEから河合節二さん(野田北部まちづくり協議会)、調布市役所の地引尚冶さん(調布市・街づくり推進課主幹)、調布市在住の沖崎剛さん(建築家)、くわえて、わたしが上記映画の監督として出席しました。

河合節二さん
河合節二さん
(野田北部まちづくり協議会)

ンポジウムは、神戸市長田区の野田北部から招いた河合さんの話を環にするかたちで、それぞれの経験と立場からの発言をまじえて進みました。河合さんは、復興まちづくりの経験に則して、「野田北部には震災前から、まちづくり協議会があって、地域の住環境改善活動をしていた。その活動が期せずして、震災後のまちづくりを押し進めるつよい力になった」と語り、「平時になにをやっているかで災害時の動きがきまる」とつづけました。

王線の地下化にともなう調布まちづくりの行政側の担当者である地引さんは、「人を、コミュニティづくりに向かわせるものはなにか」と問いかけました。わたしの印象では、調布市行政の働きかけにもかかわらずもうひとつ煮えてこない市民参画のうごきに相当なもどかしさを感じているようですそれにたいして、きょうの主催グループ調布まちづくり市民フォーラムのメンバーである沖崎さんは、住民側からの課題づくりが必要ではないかと提言そのことにふれてわたしが具体的に目に見える課題設定をすることで、参加する人たちの自発性と繋がりがうまれてくると発言し、河合さんが、京王線が地下化することで地上の線路跡地をどうするか。市民のアイデアを出し合うイベントなどをやったら、住民さんにコミュニティづくりの関心をもってもらう絶好のチャンスではないか」と引き取りました。

ポスターンポジウムの参加者(聴衆)からもさまざまな意見が出ました。私的に要約すれば、地引さんが語った行政の「もどかしさ」は、市民(住民)の側からすれば、行政のやろうとすることが「かたち」として見えてこない「もどかしさ」としてあります。住民と行政の関係が鋭角的な場合はおたがいのポジションが見えやすいのですが、鈍角的な場合はそれぞれの見解が分かりにくいということがあります。おたがいの姿がもうひとつくっきりと見えてこない「もどかしさ」。かつての住民運動ならば、これを、対決構造に持ち込んだでしょうが、ここはやはり、おたがいの行動をねばりづよく検証していく作業が必要とされています。調布市民でつくる<調布まちづくり市民フォーラム>はその機能を担っていると思います。

神大震災からの復興まちづくりの体験が、日常の調布まちづくり活動に役立つのでしょうか。飲んだらすぐ利く風邪薬のような即効性はないかもしれません。しかし、まちづくり(コミュニティづくり)を志向する根っこのところでは、KOBEの知恵に学ぶことがたくさんあります。催しの趣旨にあるように、「日本各地で“市民主体のまちづくり”」が活発になっています。行政やマスコミなどでよくつかわれる「住民参加」ではなく、「住民主体」のまちづくりが日本列島各地で志向され、実績をあげています。行政のプランづくりに住民が参加するという予定調和的な協働を越えて、住民を主体とした緊張をはらんだ行政との協働へ。これが、阪神大震災後のKOBE住民の獲得した成果であり、列島に遍在する住民運動が受け継ぐもののひとつである、とわたしは考えています。

 

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