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コラム 眼の記憶


2004年4月15日

月になって、わたしも会員である共住懇が主催する『おおくぼ学校』の第2期がはじまりました。参加(受講)を会員だけではなく、ひろく地域の住民さんや地域外の人たちにもよびかけた学習会です。昨年がその第1期で、「おおくぼ考現学03」を通低テーマとして、多面的な顔をもつ大久保・百人町地区の現在を学習しました。社会学者、ホームレス支援活動家、エスニック料理研究家、保育園園長、韓国人語学院院長、地域史家、落語家、都市計画家、大久保を研究する学生、など、さまざまな分野の実践者である講師の10回講座を、わたしは毎回興味ぶかくききました。学校への参加者は70代から高校生までと幅広く、それらの人たちといっしょに講義を受け、ディスカッションをし、課題を共有することは、とてもインタレスティングなことでした。


▲『おおくぼ学校』第1期(2003年7月)の会場のようす

2期のことしは、8回講座(4月〜12月。8月は休講)として、その中心テーマは「聞く・知る・味わう おおくぼの中のアジア」ということです。話し手の講師は、すべて大久保・百人町地域に居住する、あるいは仕事場をもつ日本人をふくむアジア人が予定されているそうですから、これまたたのしみです。ここであらためるまでもなく、この地域にはアジアからの人たちがたくさん定住しています。このまちで商売をし、家庭をつくり、生活を営んでいます。それぞれに出身地と生活体験がことなるこれらの人たちと、おなじこのまちの住民としての付き合いをふかめていくことは、共住・共生を紡いでいく魅力的な作業のひとつではありませんか。

 ことしの学校の第1回が4月3日にありました。この回のタイトルは「大久保に息づくミャンマー文化」、話者はミャンマー人のドー・イーイーミン。“ドー”は女性にたいする敬称で、男性の場合は“ウ”だそうです。ミャンマーという呼称は、わたし的には、ビルマとしたいところですが、ここではご本人の意向を規準として表記します。

ーイーミンさんは1987年に来日して以来ずっと大久保に住み、17年になります。日本へきた動機を訊くと、アメリカ人と結婚する友人に誘われて渡米する途中に立ち寄った日本に興味をもち、数週間滞在のつもりが3か月になり、半年になり……17年になってしまった、とにこやかな笑顔で語ってくれました。13年まえに、ミャンマー料理店「ヤッタナー」を新大久保駅ホーム沿いの通称“国際通り”に開店。商売の経験も料理人の修業もなかったが、見様見真似ではじめ、無我夢中でこんにちまでやってきたといいます。商売のかたわらボランティアで、在日同胞の相談援助や日本の子どもたちにミャンマーを紹介する活動をしてきました。


▲イーミンさん(手前)と
娘のジンマーさん(ミッターの事務所にて)

 そのご2003年に、NPO法人「ミャンマー日本友好協会ミッターファンデイション」を立上げました。「ミッター」はパーリ語で「慈悲の心」という意味だそうです。事務所はお店、「ヤッタナー」の2階にあります。いまの活動状況は、ミャンマーはじめアジアからの学生の生活相談、ミャンマーから農業や養鶏業の研修にくる研修員への支援、国際理解教育支援、麻薬撲滅協力、仏事支援、など多岐にわたっています。

 国際理解教育支援は、修学旅行などで大久保・百人町地区を訪れる中学生や、フィールドワークの学生たちの積極的な受け入れです。このまちと母国の繋がりを若者たちにあつく語ります。イーイーミンさんは、来日後、語学校の職員をしていたこともあって、日本とミャンマーの教育交流にとても熱心です。

 麻薬撲滅協力は、ミャンマー国内で、麻薬の原料となるケシの代替作物として日本のそば品種を栽培し、それから採れたそば粉を材料として日本そばを作って販売し、ミャンマー農家の収入にする活動です。このそばは「ヤッタナー」で買うことができます。

 仏事支援は、日本にあるミャンマー仏教(テラワダというそうです)の寺や宗教センターへの支援活動です。その寺のひとつが大久保通りと小滝橋通りの角にある太陽堂という文具店の4階にあって、ミャンマーからのお坊さんが3か月交代で常駐しています。ミャンマー人は宗教心が厚いので、こうした寺が都内のみならず全国にいくつかあり、在日ミャンマー人のカンパ(寄付)でつくられ運営されているそうです。

ーイーミンさんが1日でいちばん時間を割く仕事は、在日同胞からの生活相談です。多くのNPOとおなじように「ミッターファンデイション」も少人数で運営していますが、電話による生活相談は24時間受付けています。医療、教育、仕事など、相談は生活のすべてにわたりますが、さいきんは入管関係の相談がふえているそうです。昨年から、東京入管新宿出張所と警視庁が合同でやっている一斉摘発で、ミャンマー人も大勢捕まっているとイーイーミンさんはいいます。丁寧な日本語の流れるようなことばづかいと晴朗な声が、そのときはつかえ沈みました。

 話をいっしょにきいていた“アジアの探偵”ヤクモによると、官憲のやりかたは、無区別一網打尽的で、自分のアパートで友人と会合を開いていた正規滞在の学生たちが手入れをくった例があるそうです。また、夜半、大久保通りを歩いていただけで不審尋問にあい、抗議すると、ここは新宿だ文句があるなら署まできてもらおう、と無法かつ理不尽な恫喝をされたアジア人もいるそうです。外国人との共生をいう日本人たちは、いちど「入管法ならびに入管行政」ときっちり向い合ったほうがよい、というのがヤクモの意見です。

(この項つづく)


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